森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
◇
「エーミール、聞いたぞ。アーベントロートの倅に、いつぞやお前が連れてきた令嬢を取られたそうじゃないか。情けない奴だな。せっかく気立てのよさそうな娘だったのに」
「そうよ、あの娘と繋がりが持てれば、エデラー商会の化粧品がいつでも手に入ったのに。なんて使えない息子なのかしら」
侯爵家に戻るなり父親と母親にそう言われ、エーミールは言葉を失った。女帝として君臨していた祖母ウルリーケがまだ存命だった時に、エラと共に家に戻ったことがある。その時のふたりの言いようは、エラを下賤の者と貶めるものだった。
「父上……母上も……なぜ今になってそんなことを……」
さすがのエーミールも非難の声を上げずにはいられなかった。侯爵家のために自己を犠牲にするのは当然のことだ。この家で、ずっとそう育てられてきた。
「だってなぁ、カミラ」
「だってねぇ、エメリヒ」
ふたりは仲良く目を見合わせる。
「母上は使用人を使って、オレたちの言動を逐一報告させていたんだぞ。ちゃんとおもねる姿勢をとっておかないと、後が怖いじゃないか」
「従順なふりをして、ウルリーケお義母様にさりげなく嫌味をお見舞いするのも、なかなか大変だったのよ?」
冷たいはずの両親は、エーミールの目の前で、ねー、と子どものように首を傾けあった。
「お義母様にもっとうまいこと取り入って、お前も好きにすればよかったのに」
「母上は昔からエーミールには甘かったからなぁ。先にひ孫の顔でも見せてしまえば、あっさり陥落したと思うぞ? なにしろお前が生まれたとき、母上のデレっぷりといったら目も当てられないくらいだったからな」
「そんな……だからと言って、わたしはグレーデン家のためにこれからも生きなければ……」
今さらそんなことを言われてどうしろというのか。エーミールは必死に食い下がった。
「エーミール、聞いたぞ。アーベントロートの倅に、いつぞやお前が連れてきた令嬢を取られたそうじゃないか。情けない奴だな。せっかく気立てのよさそうな娘だったのに」
「そうよ、あの娘と繋がりが持てれば、エデラー商会の化粧品がいつでも手に入ったのに。なんて使えない息子なのかしら」
侯爵家に戻るなり父親と母親にそう言われ、エーミールは言葉を失った。女帝として君臨していた祖母ウルリーケがまだ存命だった時に、エラと共に家に戻ったことがある。その時のふたりの言いようは、エラを下賤の者と貶めるものだった。
「父上……母上も……なぜ今になってそんなことを……」
さすがのエーミールも非難の声を上げずにはいられなかった。侯爵家のために自己を犠牲にするのは当然のことだ。この家で、ずっとそう育てられてきた。
「だってなぁ、カミラ」
「だってねぇ、エメリヒ」
ふたりは仲良く目を見合わせる。
「母上は使用人を使って、オレたちの言動を逐一報告させていたんだぞ。ちゃんとおもねる姿勢をとっておかないと、後が怖いじゃないか」
「従順なふりをして、ウルリーケお義母様にさりげなく嫌味をお見舞いするのも、なかなか大変だったのよ?」
冷たいはずの両親は、エーミールの目の前で、ねー、と子どものように首を傾けあった。
「お義母様にもっとうまいこと取り入って、お前も好きにすればよかったのに」
「母上は昔からエーミールには甘かったからなぁ。先にひ孫の顔でも見せてしまえば、あっさり陥落したと思うぞ? なにしろお前が生まれたとき、母上のデレっぷりといったら目も当てられないくらいだったからな」
「そんな……だからと言って、わたしはグレーデン家のためにこれからも生きなければ……」
今さらそんなことを言われてどうしろというのか。エーミールは必死に食い下がった。