森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
 リーゼロッテを囲んで輪になっていた異形たちが、一斉に逃げ散らばっていく。サロンの真ん中で直接絨毯(じゅうたん)に座っていたリーゼロッテは、ジークヴァルトに引き寄せられた。
 あぐらの上に座らされ、腹に回された手に力がこもる。ジークヴァルトの胸に背を預け、リーゼロッテは腕の中、力を抜いた。

「あまり異形に同調しすぎるな。下手をすると取り込まれる」
「ええ、分かっておりますわ」

 見上げるとジークヴァルトは難しい顔をしている。あまりやりすぎると、異形を天に還す行為も禁止されそうだ。

「わたくし、ジークヴァルト様が一緒の時しか異形を(はら)いません。勝手な真似は致しませんから」
「ああ。無理に止めさせたりはしない」

 それでも眉間にしわが寄っていて、リーゼロッテはそこをもみほぐすように指をあてた。

「ふふ、おしわがなくなりましたわ」

 穏やかな時間に自然と笑みが漏れる。再び背を預けると、ジークヴァルトの腕に手を重ねた。

「あの、ヴァルト様」
「なんだ?」
「きちんとカークを連れていきますから、お屋敷の中だけでもお散歩を」
「却下だ」
「どうしても駄目ですか……?」
「駄目だ」
「わたくし転ばないよう気をつけますわ」
「気をつけても転ぶかもしれないだろう? 散歩に行きたいならオレが抱いて連れていく」
「それでは意味がありませんわ。わたくし、領地のお屋敷では毎日転んでおりました。上手に転ぶのには慣れております。ですから」
「駄目だ、却下だ、諦めろ」
「むぐっ」

 いきなり菓子を押しつけられる。唇を尖らせたまま、リーゼロッテはそれを口にした。
 説得は続行不能で、このあと結局は部屋まで運ばれた。ここ数日、本当に部屋の中以外は一歩も歩いていないリーゼロッテだった。

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