森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
「このままじゃ本当にまずいわ」

 うろうろと歩き回りながら、リーゼロッテは思案に明け暮れていた。広い部屋とは言え、ここで歩くにも限界がある。

「お嬢様、言いつけ通りマテアスを呼んでまいりました」
「リーゼロッテ様、ご用でしょうか? (あるじ)に内緒で部屋訪れたと知られたくないので、エラ様に呼ばれたことにしておいてくださると助かります」
「ええ、もちろん。内密にとお願いしたのはわたくしの方だもの。忙しいのに時間を取らせてごめんなさい」
「とんでもございません。リーゼロッテ様のことは最優先にするようにと、(あるじ)からも常々言われております。それでお話と言うのは……」
「マテアスも分かっているでしょう? わたくしこのままだと足腰が弱って、そのうち寝たきりの生活になりそうだわ」

 リーゼロッテの言葉に、マテアスは困り眉をさらに下げた。

(あるじ)はこうと思ったら聞く耳を持ちませんからねぇ。強めに進言してみますが、お力になれるかどうか……」
「そう……だったら、他にお願いしたいことがあるのだけれど」
「はい、なんなりとお申し付けください」

 (うやうや)しく腰を折ったマテアスに、身振り手振りを添えて話し始めた。

「まずは乗っても大丈夫な安定感のある箱を用意してほしいの。大きさは椅子の座面くらい、高さは階段の段差より少し高いくらいがいいわ」
「丈夫な箱でございますね。それを何に使われるのですか?」
「それを昇り降りしようと思って」
「昇り降り、でございますか?」
()み台昇降(しょうこう)と言って異国の運動方法なの」

 適当な設定で誤魔化して、さらに話を続ける。

「あともし可能なら、それとは別に二輪の車を作って欲しいのだけれど」
「二輪の車……? 安定感が悪そうですね」
「固定した状態で左右の足踏み台を()ぐだけだから大丈夫よ。このくらいの大きさの車輪をふたつ前後に並べて、踏み台は真ん中辺りにこうつけて……後ろの車輪には中心からこんなふうに鎖を回して、それでここを足で漕ぐと後輪が回るのよ。安定感を出すために、前には手でつかめる()をつけてほしいわ」

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