森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
◇
「なかなか開発が進まず申し訳ございません」
マテアスに耳打ちされて、リーゼロッテは困った顔になった。ジークヴァルトの目を盗み、小声のままふたりで会話を続ける。
「そのことなのだけれど、わたくし最近ちゃんと運動できていて。だから無理に続けなくっても大丈夫よ」
「左様でございますか……ですが技術者たちはそれでは納得しないでしょう。そこでご提案なのですが……」
マテアスはいつになく真剣な顔つきだ。無理難題を突き付けた自覚はある。文句を言われるのを覚悟して、リーゼロッテは背筋を伸ばして居住まいを正した。
「公爵家としましては、この二輪車を運動用ではなく、もっと実用的な移動の手段として開発していけないかと考えております」
「そうなのね。元々そう言った目的の乗り物だからいいんじゃないかしら」
「その場合、リーゼロッテ様が特許を持つという形にさせて頂きたいと思っております。もちろんダーミッシュ伯爵様には正式に契約を取りつける所存です」
「特許? そんなもの必要ないわ。わたくしは好き勝手言っただけだもの。フーゲンベルク家でいいようにしてちょうだい」
「そういうわけには参りません。この事業がうまくいけば、かかった開発費以上の利益が長期的に見込めます。リーゼロッテ様にはそれを受け取る権利がございます」
マテアスは完全にビジネスモードだ。あれこれと説得されて、結局は義父のフーゴの返事次第ということにしてもらった。
この二輪車事業が妖精印のブランドとして、後にフーゲンベルク家とダーミッシュ家、そしてエデラー商会を巻き込んだ一大産業になるなど、リーゼロッテは知る由もなかった。
「なかなか開発が進まず申し訳ございません」
マテアスに耳打ちされて、リーゼロッテは困った顔になった。ジークヴァルトの目を盗み、小声のままふたりで会話を続ける。
「そのことなのだけれど、わたくし最近ちゃんと運動できていて。だから無理に続けなくっても大丈夫よ」
「左様でございますか……ですが技術者たちはそれでは納得しないでしょう。そこでご提案なのですが……」
マテアスはいつになく真剣な顔つきだ。無理難題を突き付けた自覚はある。文句を言われるのを覚悟して、リーゼロッテは背筋を伸ばして居住まいを正した。
「公爵家としましては、この二輪車を運動用ではなく、もっと実用的な移動の手段として開発していけないかと考えております」
「そうなのね。元々そう言った目的の乗り物だからいいんじゃないかしら」
「その場合、リーゼロッテ様が特許を持つという形にさせて頂きたいと思っております。もちろんダーミッシュ伯爵様には正式に契約を取りつける所存です」
「特許? そんなもの必要ないわ。わたくしは好き勝手言っただけだもの。フーゲンベルク家でいいようにしてちょうだい」
「そういうわけには参りません。この事業がうまくいけば、かかった開発費以上の利益が長期的に見込めます。リーゼロッテ様にはそれを受け取る権利がございます」
マテアスは完全にビジネスモードだ。あれこれと説得されて、結局は義父のフーゴの返事次第ということにしてもらった。
この二輪車事業が妖精印のブランドとして、後にフーゲンベルク家とダーミッシュ家、そしてエデラー商会を巻き込んだ一大産業になるなど、リーゼロッテは知る由もなかった。