森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
◇
廊下をふたり並んで歩きながら、エラはマテアスの顔を見上げた。
「それでマテアスがダーミッシュ領まで行ってきたのですか?」
「はい、先週に急ぎ行って参りました。ダーミッシュ伯爵様も快く受け入れてくださいまして、商品開発がうまく進めば、販売経路もご協力くださる事となりました。それに伴い公爵家は、この度エデラー商会とも正式に契約を結んできた次第です」
「父にも会ったのですか?」
「ええ。エデラー男爵様はエラ様のこと、とても心配なさっておられましたよ」
「どうせ早く嫁に行けとか、行き遅れる前に貰い手を探せとか、そんなことを言ってたんでしょう? もうしつこくて嫌になっちゃう」
エラはどうあっても結婚するつもりはない。何が何でも独り身を貫いて、一生リーゼロッテのそばにいると胸に固く誓っている。
「親の心子知らずと申しますからねぇ。と言ってもわたしも独り身ですので、親の気持ちは分かりかねますが」
「マテアスこそどうなってるんですか? そろそろ結婚相手を探さないとって、ロミルダが言ってましたけど」
「生憎、伴侶となる相手がまだ見つからないものでして」
ロミルダの話だと、何人か候補はいるらしい。ただマテアスが首を縦に振らないとのことだった。そのことを口にすると、マテアスはめずらしく複雑そうな顔をした。
「あの人のおしゃべりにも困ったものですねぇ。まぁエラ様の信用が厚いといった所でしょうが。公爵家家令となる者の妻には、それなりの方を迎えねばなりませんから。家柄から素行から、問題のない相手を探さないとなりません」
「そうですか……公爵家の家令ともなると、恋愛感情で相手を選べないんですね……」
「理想は母ロミルダのように、侍女長を務めあげられるような方ですねぇ。ですが公爵家の甘い汁を吸いたいがために近づいてくる人間が多すぎまして」
マテアスも立場的にいろいろと苦労しているのだ。そう改めてエラは思った。決して表には出さないが、公爵家を取りまとめる人間として、常に重圧を感じているのだろう。
「わたしにできることがあったら、何でも言ってくださいね。リーゼロッテお嬢様に仕える立場として、わたしも公爵家のお役に立ちたいですから」
「心強いお言葉、ありがとうございます。では早速なのですが、今からちょっとした捕り物にお付き合いくださいますか?」
「ちょっとした捕り物?」
「ええ、最近甘い蜜に吸い寄せられた、蝶に似せた蛾が纏わりついておりまして。エラ様はただ事の次第を見守ってくださればそれで大丈夫ですので。今からわたしの部屋にお連れしますが、お声は出さないようお願いいたします」
何だかよく分からないが、役に立てることがあるなら大歓迎だ。快く了承して、エラはマテアスについていった。
廊下をふたり並んで歩きながら、エラはマテアスの顔を見上げた。
「それでマテアスがダーミッシュ領まで行ってきたのですか?」
「はい、先週に急ぎ行って参りました。ダーミッシュ伯爵様も快く受け入れてくださいまして、商品開発がうまく進めば、販売経路もご協力くださる事となりました。それに伴い公爵家は、この度エデラー商会とも正式に契約を結んできた次第です」
「父にも会ったのですか?」
「ええ。エデラー男爵様はエラ様のこと、とても心配なさっておられましたよ」
「どうせ早く嫁に行けとか、行き遅れる前に貰い手を探せとか、そんなことを言ってたんでしょう? もうしつこくて嫌になっちゃう」
エラはどうあっても結婚するつもりはない。何が何でも独り身を貫いて、一生リーゼロッテのそばにいると胸に固く誓っている。
「親の心子知らずと申しますからねぇ。と言ってもわたしも独り身ですので、親の気持ちは分かりかねますが」
「マテアスこそどうなってるんですか? そろそろ結婚相手を探さないとって、ロミルダが言ってましたけど」
「生憎、伴侶となる相手がまだ見つからないものでして」
ロミルダの話だと、何人か候補はいるらしい。ただマテアスが首を縦に振らないとのことだった。そのことを口にすると、マテアスはめずらしく複雑そうな顔をした。
「あの人のおしゃべりにも困ったものですねぇ。まぁエラ様の信用が厚いといった所でしょうが。公爵家家令となる者の妻には、それなりの方を迎えねばなりませんから。家柄から素行から、問題のない相手を探さないとなりません」
「そうですか……公爵家の家令ともなると、恋愛感情で相手を選べないんですね……」
「理想は母ロミルダのように、侍女長を務めあげられるような方ですねぇ。ですが公爵家の甘い汁を吸いたいがために近づいてくる人間が多すぎまして」
マテアスも立場的にいろいろと苦労しているのだ。そう改めてエラは思った。決して表には出さないが、公爵家を取りまとめる人間として、常に重圧を感じているのだろう。
「わたしにできることがあったら、何でも言ってくださいね。リーゼロッテお嬢様に仕える立場として、わたしも公爵家のお役に立ちたいですから」
「心強いお言葉、ありがとうございます。では早速なのですが、今からちょっとした捕り物にお付き合いくださいますか?」
「ちょっとした捕り物?」
「ええ、最近甘い蜜に吸い寄せられた、蝶に似せた蛾が纏わりついておりまして。エラ様はただ事の次第を見守ってくださればそれで大丈夫ですので。今からわたしの部屋にお連れしますが、お声は出さないようお願いいたします」
何だかよく分からないが、役に立てることがあるなら大歓迎だ。快く了承して、エラはマテアスについていった。