森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「生憎こんな茶番につき合うほど、わたしも(ひま)ではありませんので。今回のことは見なかった事にいたします。今すぐお引き取りくださいますか?」
「そんな訳にいかないわ!」

 マテアスが背を向け出ていこうとすると、令嬢が慌てて寝台から降りてきた。たわわな胸を揺らしながら、マテアスの腕にしがみつく。

「今わたくしが大声を上げたら、あなたは責任を取らざるを得ないわ。だって未婚のわたくしとこんなことをしていたんだから!」
「勝手に侵入して勝手にご自分で服をお脱ぎになったのでしょう? 声を上げたところで公爵家不法侵入の罪状と共に、露出狂(ろしゅつきょう)のレッテルが張られるだけでございますよ」
「事実はどうあれ、こんな状況じゃ世間は納得しないわ! 公爵家だって醜聞(しゅうぶん)は困るでしょう!?」
「醜聞になるのはあなた方、伯爵家だけですよ。何しろわたしはここ数日、この部屋には戻っておりません。今までも旦那様と執務室にいて、先ほどエデラー男爵令嬢様と一緒にここに参りました。それにあなたがひとりでその寝台に潜り込んだことを、公爵家の使用人がすべて目撃しております」
「そんなはずない! だって部屋には誰もいなかったもの!」

 令嬢がそう叫んだ時、ロミルダとエラが姿を現した。令嬢の口から悲鳴が漏れる。

「こちらは侍女長のロミルダです。どうですか、ロミルダ。この部屋で見た事を、一部始終わたしに教えてください」
「わたしはたまたまこの部屋を掃除に参ったのですが……。そこにいるご令嬢は人目を忍ぶようにこの部屋に入ってきて、ご自分で服をお脱ぎになりました。そして自ら寝台へと潜り込むのを、わたしは確かにこの目で見ました」
「そうですか。エラ様も証言してくださいますか? ここまでずっとわたしと一緒にいたと」
「はい、執務室を出たマテアスとは、ずっとここまで一緒にいました」
「それ以前の時間については、旦那様が証言してくださいます。これで分かったでしょう? この茶番はあなた様の自作自演であると、素直にそうお認めください」

 青ざめて令嬢は金切り声を上げた。

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