森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「わたくしがここまでしているって言うのに、そんなこと許されないわ! でないと伯爵家はお終いじゃない!」
「わたしの知った事ではございませんねぇ。素直に引けば事を荒立てるつもりはなかったのですが、こうなったら出る所に出て頂きましょうか」
「横暴よ! 身内で結託してわたくしを(おとし)めようだなんて……! 格式高い公爵家がそんなひどい事するなんて信じられない!」
「公爵家の上げる言明に嘘偽りがあると申されますか? それこそフーゲンベルク家を貶める行為。わたしもお遊びでこの立場にいるわけではございません。公爵家を守る人間として、有害因子は叩き潰すまでのこと」

 令嬢の手を振り払うと、マテアスは冷酷に言い放った。

「それにわたしの妻になった所で、無条件であなたの実家に手を差し伸べるとでもお思いですか? そんな甘い考えでは、公爵家家令の伴侶は務まりませんよ」

 マテアスの言葉に令嬢はその場で泣き崩れた。ロミルダが裸の肩に毛布を掛ける。

「間もなく屈強な護衛騎士がここへとやってきます。これ以上醜態(しゅうたい)(さら)したくなかったら、すぐにでも身なりをお整えください」

 そう言ってマテアスはロミルダを見た。

「後のことはお任せしてもいいですか? わたしはエラ様をお部屋まで送って参りますので」

 ロミルダが頷くと、マテアスはエラにいつも通りの穏やかな笑みを向けた。やわらかい物腰で、エラの手を取り部屋の外へと導いていく。
 すすり泣く令嬢の声を聞きながら、エラはマテアスと共に部屋を後にした。

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