森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「本日付けでエデラー家は、正式に男爵位を王に返上したそうです。これでわたしも貴族でなくなりました。よかった、ようやく肩の荷が下りました」
声を弾ませて歩を進めた。急に足取りまで軽くなる。
「ああ、そうだわ。以前約束しましたよね? わたしが貴族籍を抜けたら、敬称はつけずに呼んでくれるって」
もうマテアスと同じ平民になったのだ。「エラ様」と呼ばれる必要は既にない。横で歩いているはずのマテアスに、エラは満面の笑みを向けた。しかしそこにマテアスはおらず、思わず後ろを振り返る。だが見上げ慣れたその位置に、マテアスの顔は見あたらなかった。
視線を下げると足元の床で、なぜかマテアスが片膝をついている。エラに向かって右手を差し伸べ、反対の手は胸に当てたまま、真剣な表情でこちらを見上げていた。
「あの、マテアス……一体何をして……?」
「エラ、どうかわたしと結婚してください」
「え、嫌です」
条件反射のようにエラは瞬時に返した。マテアスは何を言っているのだろうか。生涯結婚するつもりがない事は、マテアスがいちばんよく知っているはずだ。
「そうおっしゃらずにまずはわたしの話をお聞きください。この求婚を受けるか否か、それから判断しても遅くはありません」
「いや、だからいつも言ってるように、わたしは一生独り身を貫くと……」
引き気味にエラは口を開いた。すっくと立ちあがると、マテアスは強引にエラの片手を取ってくる。
「いいえ、どうぞよく聞いてください。いいですか? これはリーゼロッテ様に関わる、とても重要かつ、重大な話です。エラ、あなたもあとで後悔をして、泣きたくはないでしょう?」
手を掴まれたまま一歩一歩と詰められて、エラは壁際まで後退させられた。薄く開かれた青い瞳に気圧されて、壁に背を預け身動きが取れなくなる。
声を弾ませて歩を進めた。急に足取りまで軽くなる。
「ああ、そうだわ。以前約束しましたよね? わたしが貴族籍を抜けたら、敬称はつけずに呼んでくれるって」
もうマテアスと同じ平民になったのだ。「エラ様」と呼ばれる必要は既にない。横で歩いているはずのマテアスに、エラは満面の笑みを向けた。しかしそこにマテアスはおらず、思わず後ろを振り返る。だが見上げ慣れたその位置に、マテアスの顔は見あたらなかった。
視線を下げると足元の床で、なぜかマテアスが片膝をついている。エラに向かって右手を差し伸べ、反対の手は胸に当てたまま、真剣な表情でこちらを見上げていた。
「あの、マテアス……一体何をして……?」
「エラ、どうかわたしと結婚してください」
「え、嫌です」
条件反射のようにエラは瞬時に返した。マテアスは何を言っているのだろうか。生涯結婚するつもりがない事は、マテアスがいちばんよく知っているはずだ。
「そうおっしゃらずにまずはわたしの話をお聞きください。この求婚を受けるか否か、それから判断しても遅くはありません」
「いや、だからいつも言ってるように、わたしは一生独り身を貫くと……」
引き気味にエラは口を開いた。すっくと立ちあがると、マテアスは強引にエラの片手を取ってくる。
「いいえ、どうぞよく聞いてください。いいですか? これはリーゼロッテ様に関わる、とても重要かつ、重大な話です。エラ、あなたもあとで後悔をして、泣きたくはないでしょう?」
手を掴まれたまま一歩一歩と詰められて、エラは壁際まで後退させられた。薄く開かれた青い瞳に気圧されて、壁に背を預け身動きが取れなくなる。