森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-

 エラを壁に押し付けて、マテアスはその唇を奪い取った。驚きで強張(こわば)る体を逃がさないようにと、角度を変えて(ついば)んでいく。漏れた吐息に合わせるように、口づけをどんどん深めていった。

 エラから力が抜けたのを確認すると、マテアスはごそごそと(ふところ)を探って黒い箱を取り出した。
 何年もそこにしまわれていた小さな箱は、()り切れてかなりみすぼらしくなっている。唇を離さないままマテアスは、親指で(ふた)を押し開けた。

 箱の中にはシンプルな指輪がふたつ、銀の輝きを美しく放っていた。大きさの違う小さい方を手に取ると、エラの薬指にはめていく。
 もうひとつの指輪を取り出すと、用済みとばかりに小箱を後ろ手に投げ捨てる。エラに指輪を握らせて、自らの指を輪の中めがけて突っ込んだ。

 真新しい指輪が、互いの指にはめられた。下手をすると永遠に日の目を見ることのなかったエンゲージリングは、この日ようやく、正しい役割を果たしたのだった。

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