森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
 無意識だったとはいえ、我ながら驚きの吸引力だ。あわてて流れを止めようとすると、ジークヴァルト自らが力を流し込んできた。

「別に問題ない」
「ですが……」

 力は使いすぎると疲労をもたらす。身の内にあふれる青の力は、すでに相当な量になっていた。

「ならばこれであいこだ」

 そう言ってジークヴァルトは緑の力を引き寄せた。今度はリーゼロッテの力がジークヴァルトの中に流れ込んでいく。青と緑が混ざり合う。自分がジークヴァルトになって、ジークヴァルトが自分になるような、そんな感覚に包まれた。

(むしろふたりがひとつになっているような……)

 うれしさとあまりの気持ちよさに、きゅっと背中に手を回す。と、サロンがドン! と大きく揺れた。

 久々の公爵家の呪いだ。ティーカップがガチャガチャと揺れ、積まれた書類は今にも崩れ落ちそうだ。そんな中きゅるるん小鬼たちが、さらにハイテンションで走り回っている。

「ヴァルト様……!」

 一向に落ち着かない騒ぎに、膝の上、きつくしがみつく。強く抱きしめ返されて、サロンがさらに激しく揺れた。

「旦那様、そこまでです!」

 雪崩(なだれ)を起こした書類の(たば)を、駆け付けたマテアスが器用にキャッチした。それでも収まらないサロンを前に、マテアスは糸目をつり上げる。

「だ・ん・な・さ・ま!」

 そこでようやく静かになった。恐る恐る顔を上げると、大勢の使用人たちが調度品を押さえて守っている。おかげで被害はそれほど大きくなさそうだ。

「まったく、油断も隙も無い……ご自制できないのでしたら、旦那様のお部屋で愛をお語り合いください」
「駄目だ」
「そうおっしゃるのなら、きちんと言動を一致させてくださいよ」
「分かっている」
「分かっておられないから今こうなっているのでしょう?」

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