森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
 旅立ちまで一週間を切ったある日、リーゼロッテはそわそわと客人の到着を待っていた。出発の前に、ダーミッシュの家族が会いに来てくれると手紙が来たのだ。
 伯爵家にはもう一年近く帰っていない。もはやフーゲンベルク家が第二の我が家になりつつあった。

「お義父様、お義母様、ルカも……!」

 訪れた三人と順にハグをする。義母のクリスタとは本当に久しぶりだ。顔を見ただけで急にホームシックな気分になってしまった。

「リーゼロッテ、いろいろと大変だったね」
「ずっと心配していたのよ」
「義姉上、少しお痩せになったのではありませんか?」

 リーゼロッテは東宮と王城で保護を受けていたことになっている。神殿で(とら)われていたことは、表向きなかったことにされていた。

「わたくしなら大丈夫ですわ。それよりも今は旅のことで頭がいっぱいで」
「ふふ、リーゼは長い旅行は初めてだものね」
「国を縦断するんですよね? いろんな土地に行けるなんて義姉上がうらやましいです! わたしも同行させてもらえないでしょうか?」
「ルカ、リーゼロッテは遊びに行くわけではないんだ。浮ついたことを言うものではない」

 フーゴが厳しい声音で(たしな)める。けろっとしているルカの横で、リーゼロッテが意気消沈な顔をした。

「お義父様……王命をいただいたのに、わたくしこそちょっと浮ついておりましたわ」
「リーゼはいいんだよ。一生に一度の大切な旅なのだから」
「そうね、気負わずに、ジークヴァルト様と旅をたのしんでくるといいわ」
「ありがとうございます、お義父様、お義母様……。初めての貴族としてのお勤めですもの。わたくし国のために、しっかりと責務を果たしてまいりますわ!」

 決意も新たに握りこぶしを作る。そんなリーゼロッテを見て、フーゴが戸惑ったように首をかしげた。

「リーゼ? 今回の王命は……」
「いいのよ、あなた。そのことはあとでわたくしから心構えを伝えておくわ」
「あ、ああ、そうだな。クリスタ、任せたよ」

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