森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「お義父様、お義母様、内緒話ですか?」
こそこそと話し合う姿が仲睦まじげに見えたのか、リーゼロッテが微笑ましそうに目を細めてくる。どこに出しても恥ずかしくない立派な娘に育ってくれた。改めて思ってフーゴは胸を熱くした。
「お義父様ったら、そんなにご心配なさらなくても、わたくし本当に大丈夫ですわ」
「ああ、そうだね。リーゼ……お前は自慢の娘だ。どこに行ってもわたしたちはずっと家族だよ」
「はい、お義父様……」
つられるようにリーゼロッテも目を潤ませる。
「絶対に粗相などしないよう、細心の注意を払いますわ」
「いや、そうではないんだが……」
ずっと旅での振る舞いを気にしているリーゼロッテに苦笑いを送った。
「そういえばわたくしが子供の頃に、マナーを教えてくださったご夫人がいらっしゃいましたでしょう?」
突然の問いかけに、フーゴとクリスタは目を見合わせる。一拍置いたのちに、フーゴが探るような声音で問い返した。
「ああ、いたね。それがどうしたんだい?」
「わたくし記憶が曖昧で、その方のお名前を忘れてしまったのです。どこかでお会いして失礼をしたくないので、改めてお名前を教えていただけますか?」
「なんだ、そういうことか。彼女はアルブレヒツベルガー夫人だよ」
フーゴはほっとしたように笑顔で答えた。
「あるれひれかつべるがー夫人?」
「アルブレヒツベルガー夫人よ、リーゼ」
「あるぶつれひべぶ……」
「義姉上、アルブレヒツベルガー夫人ですよ」
「あるぶぶつべ……」
舌を噛みながら、みるみるうちに涙目になっていく。
「お嬢様! わたしが紙に綴りを書きますから、後でゆっくり練習いたしましょう!」
「ありがとう、エラ……大人になった今でも覚えられないなんて……」
しょんぼりするリーゼロッテをみなは微笑ましそうに見やった。
「リーゼ、もっとゆっくりしていきたいのだけれど、これからルカとレルナー公爵家に訪問する予定なんだ」
「そうなのですね。ルカ、ツェツィーリア様によろしくお伝えしてね」
「はい、もちろんです!」
「クリスタはジークヴァルト様に滞在の許可をいただいたから、ふたりでゆっくり話をするといい。クリスタ、くれぐれも頼んだよ」
「ええ、あなた。心配はしないで」
名残惜しそうにフーゴはルカを連れてフーゲンベルク家を後にした。
こそこそと話し合う姿が仲睦まじげに見えたのか、リーゼロッテが微笑ましそうに目を細めてくる。どこに出しても恥ずかしくない立派な娘に育ってくれた。改めて思ってフーゴは胸を熱くした。
「お義父様ったら、そんなにご心配なさらなくても、わたくし本当に大丈夫ですわ」
「ああ、そうだね。リーゼ……お前は自慢の娘だ。どこに行ってもわたしたちはずっと家族だよ」
「はい、お義父様……」
つられるようにリーゼロッテも目を潤ませる。
「絶対に粗相などしないよう、細心の注意を払いますわ」
「いや、そうではないんだが……」
ずっと旅での振る舞いを気にしているリーゼロッテに苦笑いを送った。
「そういえばわたくしが子供の頃に、マナーを教えてくださったご夫人がいらっしゃいましたでしょう?」
突然の問いかけに、フーゴとクリスタは目を見合わせる。一拍置いたのちに、フーゴが探るような声音で問い返した。
「ああ、いたね。それがどうしたんだい?」
「わたくし記憶が曖昧で、その方のお名前を忘れてしまったのです。どこかでお会いして失礼をしたくないので、改めてお名前を教えていただけますか?」
「なんだ、そういうことか。彼女はアルブレヒツベルガー夫人だよ」
フーゴはほっとしたように笑顔で答えた。
「あるれひれかつべるがー夫人?」
「アルブレヒツベルガー夫人よ、リーゼ」
「あるぶつれひべぶ……」
「義姉上、アルブレヒツベルガー夫人ですよ」
「あるぶぶつべ……」
舌を噛みながら、みるみるうちに涙目になっていく。
「お嬢様! わたしが紙に綴りを書きますから、後でゆっくり練習いたしましょう!」
「ありがとう、エラ……大人になった今でも覚えられないなんて……」
しょんぼりするリーゼロッテをみなは微笑ましそうに見やった。
「リーゼ、もっとゆっくりしていきたいのだけれど、これからルカとレルナー公爵家に訪問する予定なんだ」
「そうなのですね。ルカ、ツェツィーリア様によろしくお伝えしてね」
「はい、もちろんです!」
「クリスタはジークヴァルト様に滞在の許可をいただいたから、ふたりでゆっくり話をするといい。クリスタ、くれぐれも頼んだよ」
「ええ、あなた。心配はしないで」
名残惜しそうにフーゴはルカを連れてフーゲンベルク家を後にした。