森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
部屋を出る前にエラへと手招きをする。
「リーゼロッテがああも素直でいい娘に育ったのも、エラがずっとそばにいてくれたおかげよ。これからも変わりなく支えてあげてちょうだい」
「もったいないお言葉です。生涯をかけてリーゼロッテ様をお守りいたします」
力強く頷いた後、エラは伺うように声をひそめた。
「あの奥様……お嬢様にお伝えする心構えは、本当にあれだけでよかったのですか……?」
「いいのよ。いく先に初夜が待っていると思うと、緊張して旅をたのしめないでしょう? どうせ帰りは旅どころじゃなくなるんだもの。リーゼの性格を考えたら、黙ってあげていたほうが却っていいわ」
「ですが、その、いきなりだとお嬢様がショックを受けないでしょうか……」
「リーゼはその位で傷つく娘じゃないわ。それにエラも分かってると思うけど、殿方に一度スイッチが入ると、わたくしたちにはどうあっても止められなくなるじゃない?」
最近、毎晩のように覚えのあるエラは、顔を赤らめて頷いた。
「ジークヴァルト様は誠実なお方だけれど、大分我慢なさっているようだから。変な時に襲われるよりはずっといいでしょう? リーゼもジークヴァルト様のことをちゃんとお慕いしているようだし、悪いことにはならないと思うわ。それに、愛する方に愛されるのはとても素敵なことよ」
「そうですね……わたしもそう、思います」
「だからエラも出立前はあたたかく見守ってほしいの。その代わりリーゼが公爵夫人として戻ってきた後のことは、くれぐれもよろしくお願いね」
「はい、奥様。お嬢様のことはどうぞこのエラにお任せください」
そんなこんなで真実が伝わらないまま、晴れて旅立ちの日を迎えたのだった。
「リーゼロッテがああも素直でいい娘に育ったのも、エラがずっとそばにいてくれたおかげよ。これからも変わりなく支えてあげてちょうだい」
「もったいないお言葉です。生涯をかけてリーゼロッテ様をお守りいたします」
力強く頷いた後、エラは伺うように声をひそめた。
「あの奥様……お嬢様にお伝えする心構えは、本当にあれだけでよかったのですか……?」
「いいのよ。いく先に初夜が待っていると思うと、緊張して旅をたのしめないでしょう? どうせ帰りは旅どころじゃなくなるんだもの。リーゼの性格を考えたら、黙ってあげていたほうが却っていいわ」
「ですが、その、いきなりだとお嬢様がショックを受けないでしょうか……」
「リーゼはその位で傷つく娘じゃないわ。それにエラも分かってると思うけど、殿方に一度スイッチが入ると、わたくしたちにはどうあっても止められなくなるじゃない?」
最近、毎晩のように覚えのあるエラは、顔を赤らめて頷いた。
「ジークヴァルト様は誠実なお方だけれど、大分我慢なさっているようだから。変な時に襲われるよりはずっといいでしょう? リーゼもジークヴァルト様のことをちゃんとお慕いしているようだし、悪いことにはならないと思うわ。それに、愛する方に愛されるのはとても素敵なことよ」
「そうですね……わたしもそう、思います」
「だからエラも出立前はあたたかく見守ってほしいの。その代わりリーゼが公爵夫人として戻ってきた後のことは、くれぐれもよろしくお願いね」
「はい、奥様。お嬢様のことはどうぞこのエラにお任せください」
そんなこんなで真実が伝わらないまま、晴れて旅立ちの日を迎えたのだった。