森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
     ◇
 馬車を降りて、すかさず抱き上げられた。そのまま王城の廊下を運ばれる。
 公爵家を出るときもそうだった。エントランスに向かおうと扉を開けると、既にジークヴァルトが待っていて、有無を言わさず馬車まで横抱きで移動させられた。一歩も歩かないまま、王城に到着したリーゼロッテだ。

「ヴァルト様……わたくし自分で歩けますから」
「駄目だ」

 短く言って、ジークヴァルトは大股で歩を進める。周囲の好奇の目にさらされて、恥ずかしさのあまりリーゼロッテは黒い騎士服の首筋に顔をうずめた。
 短くなった髪を詮索されないようにと、エラがまとめ髪にしてくれた。それがあだとなって、うまく顔を隠せない。

 長い廊下を出会っては、驚き顔の騎士たちが遠ざかっていく。いつか見た風景だ。ジークヴァルトと再会した二年前、同じように輸送されていたことを思い出す。

(両思いになったのに、あの頃と扱いが変わらない……)

 涙目になりつつ、ダメモトで訴えた。

「ヴァルト様、わたくし今年で十七になります。それなのに王城で抱き上げて運ばれるなど……とても恥ずかしいですわ」
「オレは別に恥ずかしくない。それにオレたちは婚約者だ。何もおかしくはないだろう?」
「い、いえ……婚約者同士と言えどさすがにこれは……」
「そうなのか? 父上たちはいつでもこんな感じだったぞ」
「え……?」

(お父様たちって……ジークフリート様が? もしかしてヴァルト様、本当にこれが当たり前だと思っているの……!?)

 ジークヴァルトの奇行の数々は、家庭環境に起因しているのか。だが記憶に残る初恋の人ジークフリートが、そんなおかしなことをする人物とは思えない。

 その間も歩は止まらず、だっこ行脚(あんぎゃ)は続いていく。結局は降ろしてもらえないまま、騎士団の訓練場に辿り着いた。
 訓練場に入るなり、注目が集まった。リーゼロッテを抱えたジークヴァルトが登場するや否や、どよめきが溢れ出す。

「噂の妖精姫だ……」
「幻の令嬢、妖精姫だ……」
「本当にいたんだ、伝説の妖精姫……」

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