森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「ああ、ベッティなら元気にしてるよ。怪我の具合も大したことなかったみたい。大手柄の褒美(ほうび)に金一封と休暇を貰って、今頃食べ歩きの旅に出てるから」
「そう……でしたか」

 放心して息をつく。次の瞬間、リーゼロッテの瞳にもりもりと涙がせりあがった。

「カイ様、わたくし、ベッティになんて言って謝ったらいいのか……」
「うわっ、泣かないで、ベッティならマジで大丈夫だから! マジでマジで泣くのだけはマジ勘弁して……!」
「「カイ……」」

 背後から、()うように低い声がハウリングした。恐る恐る振り返ると、ジークヴァルトとイグナーツが、同じ顔をして仲良く肩を並べている。

「ご、誤解です」
「ロッテを泣かすなんざいい度胸じゃねぇか」
()(ぎぬ)です」
「話なら後で聞く」
「だからオレのせいじゃないですってばっ」

 じりじりと追い詰められて、カイはバルコニーから来た隣室へと飛び移った。

「じゃあリーゼロッテ嬢、この先ジークヴァルト様相手に大変だと思うけど、なんとか頑張って!」
「おい、コラ、待て、カイ! ロッテ、オレは行く。そいつ相手に大変だとは思うが、とにかく頑張れ! ジークヴァルト、お前は調子に乗ってヤりすぎんなよ!」

 そう言い残すと、イグナーツはカイを追ってバルコニーの(さく)を乗り越える。嵐のように去っていく背中を、残されたジークヴァルトとともに見送った。

「わたくしは何を頑張れば……?」

 むしろ道中、気を張っているのはジークヴァルトの方だ。抱きかかえられているだけの自分には、大変と思えることなど何もない。

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