森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「旦那様はずっとリーゼロッテ様に首ったけですわ。お屋敷でも夜会でも、いつでもリーゼロッテ様を目で追っておられますから」
「それは同感ですわね。リーゼロッテ様が鈍くいらっしゃるから、公爵様が少しばかり不憫ですわ」
「ヤスミン様……」
いつの間にいたのか、バスケットを持ったヤスミンがいたずらな笑みを向けてくる。
「お父様に差し入れに来ましたの。リーゼロッテ様とお会いできてうれしいですわ」
ヤスミンは侯爵であるキュプカー隊長のひとり娘だ。そもそも騎士団の訓練を見たいと思ったのも、ヤスミンから話を聞いたからだった。
エラが椅子をずれてヤスミンが隣に腰かけると、騎士たちの注目がますますこちらに集まった。
幻の妖精姫と噂の伯爵令嬢リーゼロッテ。いつも差し入れをくれる侯爵令嬢ヤスミン。妖艶なわがままボディの子爵夫人エマニュエル。そして妙齢美人の男爵令嬢エラ。この華やかな並びに、目を奪われるなと言うのは無理な話だ。
その視線を威圧して、ジークヴァルトが騎士たちを全員、明後日の方に向けさせる。
「ほら、やっぱり。旦那様、あんなに必死になって」
「公爵様のご苦労はこれからも絶えませんわね」
そんなふうに笑われて、今までのジークヴァルトを思い返す。膝にのせたり、抱き上げて運んだり、人前で髪をなでたり、あーんをしたり。あの奇行の数々は、初恋のリーゼロッテに向けられた独占欲のあらわれなのだろうか?
そう思った瞬間、頬がぼっと上気した。
(ずっと子ども扱いだと思っていたのに……。ヤスミン様が言うように、わたしってかなり鈍いのかしら……)
だが分かりにくいジークヴァルトも大概だと思う。口べたなのは分かっているが、もう少し言葉があっても良かったのにと思ってしまう。
そんなとき別の令嬢たちが数人、観覧席にやってきた。アイドルのおっかけさながらに、騎士たちを見てはきゃいきゃいと騒ぎ出す。
「見て、今日はフーゲンベルク公爵様がいらっしゃるわ!」
「なんて幸運! 公爵様はここ最近お姿を現さなかったから」
「ああ、あの冷たい視線、たまらないわ……わたくしも目の前で睨んで欲しい……」
「それは同感ですわね。リーゼロッテ様が鈍くいらっしゃるから、公爵様が少しばかり不憫ですわ」
「ヤスミン様……」
いつの間にいたのか、バスケットを持ったヤスミンがいたずらな笑みを向けてくる。
「お父様に差し入れに来ましたの。リーゼロッテ様とお会いできてうれしいですわ」
ヤスミンは侯爵であるキュプカー隊長のひとり娘だ。そもそも騎士団の訓練を見たいと思ったのも、ヤスミンから話を聞いたからだった。
エラが椅子をずれてヤスミンが隣に腰かけると、騎士たちの注目がますますこちらに集まった。
幻の妖精姫と噂の伯爵令嬢リーゼロッテ。いつも差し入れをくれる侯爵令嬢ヤスミン。妖艶なわがままボディの子爵夫人エマニュエル。そして妙齢美人の男爵令嬢エラ。この華やかな並びに、目を奪われるなと言うのは無理な話だ。
その視線を威圧して、ジークヴァルトが騎士たちを全員、明後日の方に向けさせる。
「ほら、やっぱり。旦那様、あんなに必死になって」
「公爵様のご苦労はこれからも絶えませんわね」
そんなふうに笑われて、今までのジークヴァルトを思い返す。膝にのせたり、抱き上げて運んだり、人前で髪をなでたり、あーんをしたり。あの奇行の数々は、初恋のリーゼロッテに向けられた独占欲のあらわれなのだろうか?
そう思った瞬間、頬がぼっと上気した。
(ずっと子ども扱いだと思っていたのに……。ヤスミン様が言うように、わたしってかなり鈍いのかしら……)
だが分かりにくいジークヴァルトも大概だと思う。口べたなのは分かっているが、もう少し言葉があっても良かったのにと思ってしまう。
そんなとき別の令嬢たちが数人、観覧席にやってきた。アイドルのおっかけさながらに、騎士たちを見てはきゃいきゃいと騒ぎ出す。
「見て、今日はフーゲンベルク公爵様がいらっしゃるわ!」
「なんて幸運! 公爵様はここ最近お姿を現さなかったから」
「ああ、あの冷たい視線、たまらないわ……わたくしも目の前で睨んで欲しい……」