森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
 ずんずんと進む先、茂みの奥で人の声がした。クリスティーナとアルベルトだ。そう思って声をかけようとする。

「……リーゼロッテは相変わらずだったわね。あんなふうに感情をすぐに表に出したりして、うらやましいくらいだわ」

 自分のことが会話にのぼって、リーゼロッテは思わず身をひそめた。生垣の向こうのガゼボのベンチに、ふたりは並んで座っている。

「公爵の狭量ぶりも見ていて飽きないわ。ずっとここにいてくれないかしら」
「またそのようなことを……。それにリーゼロッテ様も公爵様も、もう目上のお方ですよ」
「分かっているわ。でもこの屋敷では誰も気にはしないでしょう? 口うるさく言うのはアルベルトくらいよ」
「クリスティーナ……」
「それを言うなら、その名で呼ばないでちょうだい。わたくしのことはヘッダとお呼びなさい」

 つんと顔をそらしたクリスティーナをアルベルトが胸に引き寄せた。

「他の女の名であなたに愛を誓えるわけないでしょう?」
「まあ、愛だなんて。とてもアルベルトの口から出た言葉だとは思えないわ……ん」

 アルベルトは素早くクリスティーナの唇を奪った。

「ん……あなた、最近強引よ。以前のように聞き分けよく引くこともしなくなったし……まるで別人ね」
「わたしをそうさせたのはあなただ、クリスティーナ」

 苦しげに言って再び口づける。繰り返されるリップ音の中、はじめだけ抵抗を見せたクリスティーナの腕が、アルベルトの首に絡みついた。切なげな息を漏らすクリスティーナを、アルベルトがベンチに押し倒す。

 知り合いの濃いラブシーンに、リーゼロッテの全身が真っ赤に染まった。どんどん盛り上がっていくふたりに、動揺のあまり胸は爆発寸前だ。

「何を見ている?」
「ひょあっ」

 耳元で囁かれ、口から心臓が飛び出した。リーゼロッテが見ていた先を、ジークヴァルトも覗き込もうとする。

「だ、駄目ですわ! この先は進入禁止ですっ」

 慌ててジークヴァルトの目を塞ぐ。ふたりの逢瀬(おうせ)を邪魔しないようにと、広い背中をぐいぐいと押しやった。

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