野いちご源氏物語 四二 匂兵部卿(におうひょうぶきょう)
源氏(げんじ)(きみ)父帝(ちちみかど)に特別に愛された方だったけれど、当時の右大臣(うだいじん)()など敵も多く、頼りになるご親戚もいらっしゃらなかった。
だからこそ自分で自分をお守りになって、目立つことはなさらないよう用心しておられた。
無実(むじつ)(つみ)を着せられそうになったときには自主的に須磨(すま)へ行かれたし、お亡くなりになる前には計画的にご出家(しゅっけ)もなさった。
あらゆることをさりげなくゆったりとなさるご性格だったけれど、この若君(わかぎみ)はもう少し生き急いでおられるようなところがある。

たしかに、すでにお年に似合わないほど立派なご身分で、世間からの評判も高い。
そのせいかしら、気位(きぐらい)が高くて、ご自分にも周りにもお厳しいような感じがする。
お顔立ちは特別に(すぐ)れておられるわけではない。
ただ、こちらが気恥ずかしくなるほどの気品があって、心の底の見えない感じが他の若者とは違っていらっしゃる。
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