野いちご源氏物語 四二 匂兵部卿(におうひょうぶきょう)
薫の君はすでにこの世をつまらないものと悟っていらっしゃる。
<結婚は出家の妨げになる。なるべく早くこの世を捨てたいのだから、面倒事にはかかわらずにおこう>
姫君の婿にとさりげなく申し込む貴族たちにも知らん顔をなさっている。
ましてや、親の許可がないような女性にお心をお向けになることはない。
まだ本当の恋に落ちたことがないから澄ましておられるのでしょうね。
十九歳におなりになった年には、さらにご出世なさった。
帝や明石の中宮様に大切にされて、たくさんの貴族のなかで堂々とした地位にお就きになった。
それでも調子に乗ったお振舞いなどはなさらない。
ご自分の出生の秘密がお心に引っかかって、若者らしい恋愛遊びには無関心なの。
落ち着いて大人びたお人柄だと世間に思われていらっしゃる。
匂宮様が恋心を募らせておいでの内親王様は、上皇様のお住まいでお暮らしになっている。
そこには薫の君のお部屋も用意されているから、自然と内親王様のご様子が伝わってくる。
とても奥ゆかしくご立派なお人柄のようで、少しはお心が動く。
でも、こちらから交流をお願いすることは遠慮していらっしゃる。
<上皇様はあらゆることで私を親しくお扱いくださるが、この内親王様からだけは遠ざけるようになさる。そもそも内親王は神聖なものであるし、上皇様にとってはたったおひとりのお子なのだから、警戒なさるのも当然だろう。そういう方に手を出すのは面倒だ。うっかり本気になってしまったら、私にも内親王様にも困ったことになる>
わざわざ近づいてはいけないとご自分に言い聞かせなさる。
<結婚は出家の妨げになる。なるべく早くこの世を捨てたいのだから、面倒事にはかかわらずにおこう>
姫君の婿にとさりげなく申し込む貴族たちにも知らん顔をなさっている。
ましてや、親の許可がないような女性にお心をお向けになることはない。
まだ本当の恋に落ちたことがないから澄ましておられるのでしょうね。
十九歳におなりになった年には、さらにご出世なさった。
帝や明石の中宮様に大切にされて、たくさんの貴族のなかで堂々とした地位にお就きになった。
それでも調子に乗ったお振舞いなどはなさらない。
ご自分の出生の秘密がお心に引っかかって、若者らしい恋愛遊びには無関心なの。
落ち着いて大人びたお人柄だと世間に思われていらっしゃる。
匂宮様が恋心を募らせておいでの内親王様は、上皇様のお住まいでお暮らしになっている。
そこには薫の君のお部屋も用意されているから、自然と内親王様のご様子が伝わってくる。
とても奥ゆかしくご立派なお人柄のようで、少しはお心が動く。
でも、こちらから交流をお願いすることは遠慮していらっしゃる。
<上皇様はあらゆることで私を親しくお扱いくださるが、この内親王様からだけは遠ざけるようになさる。そもそも内親王は神聖なものであるし、上皇様にとってはたったおひとりのお子なのだから、警戒なさるのも当然だろう。そういう方に手を出すのは面倒だ。うっかり本気になってしまったら、私にも内親王様にも困ったことになる>
わざわざ近づいてはいけないとご自分に言い聞かせなさる。