野いちご源氏物語 四二 匂兵部卿(におうひょうぶきょう)
尼宮(あまみや)様がお生みになった若君(わかぎみ)は、源氏(げんじ)(きみ)がお年を召してからのお子なの。
ご将来を心配なさって、新上皇(じょうこう)様によくよくお願いしていかれた。
上皇様はご遺言(ゆいごん)どおり目をおかけになっている。
一方で上皇様の中宮(ちゅうぐう)様は頼りになさっている。
(とうと)い中宮様とはいえ、皇子(みこ)様がいない心細いお立場だから、若君を将来の後見(こうけん)役として頼っておられるの。

元服(げんぷく)儀式(ぎしき)も上皇様のお住まいでおさせなさった。
(みかど)から侍従(じじゅう)というお役職をいただかれて、まもなく中将(ちゅうじょう)昇進(しょうしん)なさった。
それだけではご心配だったのかしら、上皇様はご自分の権限(けんげん)位階(いかい)もお上げになる。
元服なさったばかりの若い貴族とは思えないような、重々しいご身分におなりになったわ。

上皇様のお住まいに若君のためのお部屋も用意なさった。
女房(にょうぼう)女童(めのわらわ)もきちんとした人をお集めになる。
上皇様や中宮様の女房たちのなかでも、美しく上品な女房は若君に(ゆず)ってしまわれた。
どうにかしてこちらのお住まいを気に入ってほしいとお思いなのでしょうね。

上皇様には内親王(ないしんのう)様がおひとりだけいらっしゃる。
源氏の君のご親友だった亡き大臣(だいじん)様の姫君(ひめぎみ)で、弘徽殿(こきでん)女御(にょうご)様と呼ばれていた方がお生みになった方よ。
上皇様はこれ以上ないほど大切にお世話しておられるけれど、それに負けないほど若君のことも大切になさっているの。
< 6 / 18 >

この作品をシェア

pagetop