贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。

16.奪われたダイヤモンド(オスカー視点)

「オスカー、その子は私が預かるから、早くシェリルの元に行きなさい。シェリルは貴方にとって全てなんでしょ」
「母上?」
「城内に貴方とカロリーヌの子が生まれた事が広まっている。きっとシェリルの耳にも入っているわ」

母の言葉に血の気が引いていく。不幸中の幸いかシェリルの両親は王宮の側の侯爵邸に戻っているから、この事を知らないはずだ。もし、シェリルを溺愛するディオン・ヘッドリー侯爵の耳にこの騒ぎを知られたら、結婚証明書を破いてでもこの結婚を成立させないだろう。

「どうして、こんな事に⋯⋯」
「ごめんなさい。私が浅はかだったわ」

絞り出すような声を出しながら、母が赤子を抱き上げた。トントンと母がゆっくりと背を叩くと赤子はそっと泣き止む。

「余計な事をして本当に申し訳なかったわ。実はダミエ男爵から、オスカーが夜伽の実技を放棄している事に対して苦言を呈されたの。夫を亡くした自分の娘が丁度良い相手になると言われて簡単に受け入れてしまった私が愚かだったわ」

母の遠戚だが身分の低いダミエ男爵家。通常、夜伽の実技はそういった下級貴族の女がする事が多い。母が警戒心を抱けなかったのも無理はない。

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