贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
フレデリックはここで私に愛の告白をするつもりなのだろう。勿論、それは私を利用する為の演技。私もユリシスから真実を聞かなければ、彼の思惑通りに動いていた可能性がある。オスカーの裏切りに絶望していたし、友人のフレデリックが助けてくれて嬉しかった。私に隠していた想いがあると言って愛の告白をされたら間に受けていただろう。

「貴方の気持ちなんて知らないわ。それよりも今は赤毛の青年の手当てが必要でしょ。魔法使いを同行させているなら、お願いできないかしら」

私の言葉にフレデリックは手を挙げて、人を呼んだ。黒いローブを着たブルーサファイアの瞳をした白髪の男性が近付いてくる。

「この赤毛の男を治療して欲しい」
長いローブから出た褐色の手から、光の粒子が降ってくる。
ユリシスの顔色は良くなったけれど、首の爛れたような黒い跡はそのままだ。

「この青年は禁忌に触れた事で腐りかけています」

黒いローブの男が低く地鳴りのような声で呟くと、フレデリックの目が途端に鋭くなった。

「禁忌の魔法? 『時戻し』か」
フレデリックが見たこともないような険しい顔をして、ユリシスを見下ろす。
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