贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
レナルドのルビー色の瞳が見たこともないくらいキラキラと輝いた。

「もちろんよ。レナルドは手先が器用だし期待してるわ。これくらいに私の髪を切り揃えて」
私は顎下ラインを指し示した。処刑で切り揃えられた髪の位置。

私は愛する弟に私の髪を切って貰うことにした。
これは戒めであり、私の決意。短い髪を見る度に私は守れなかった罪なき弟を思い出す。手入れの行き届いた贅沢な銀髪。オスカーが私の髪の束にしょっちゅう口付けるから、鼈甲の櫛で艶が出るまで念入りにとかした。

その髪がパサリと床に落ちていく。

「お客様、どうですか?」
鏡越しのレナルドが弾む声で尋ねて来た。
鏡の中の私が処刑された日の私と重なる。

「とても素敵。気に入ったわ。ありがとう、一流の仕事ね。レナルドは何にでもなれる天才よ」
私はレナルドの手からそっとナイフを取り上げ、彼を再び抱きしめた。涙が出そうなくらい彼の体は温かい。

扉をノックする音がして、反射的に返事をする。

「シェリル! 貴方は何をしているの?」

母アンリエットが、床に落ちた髪を見て激昂した。
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