贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
「初めましてですね。お噂通りに国を傾かせるような美しい方で驚きました」
「国を傾かせる予定はありませんわ。アベラルド王国を建て直したくて領地の視察に来たのです」
領地を管理してくれているヘッドリー領地の管理者が私を出迎えてくれた。
名前はなんと言っただろうか。

「ジョエルです。以後お見知り置きを」
白髪混じりの髪をした初老と男は名乗りを上げると、面倒そうな気持ちを隠しながら領地を丁寧に案内してくれる。

「ここは秋なのに暖かいのね」
「首都の南に位置してますから」

心なしか冷たく発せられる言葉に私は頷く。
この暖かい土地を活用してアベラルド王国の貧困を解消できないだろうか。
道に地べたで座っている子供たちが、石や流木を彫刻刀で掘っている。

私はその中の一人の亜麻色の髪の女の子に近寄った。
その子が石で掘った薔薇に私は感動する。

「繊細で美しいわ。石なのに息が吹き込まれているみたいに花の瑞々しさが伝わってくる。貴方は天才ね。この技術はどこで習ったの?」
「誰にも習ってません。これくらいしかすることがないので」

私に一瞥もくれず、一心不乱に石を掘る女の子。
< 25 / 158 >

この作品をシェア

pagetop