贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
掘っているのは柔らかい石という事もあるが、角度や強さ間違えると刃の方が折れてしまいそうだ。
それなのに、手慣れた様子で美しい石の薔薇を咲かせている。
見ているだけでワクワクして、石ではなく宝石を掘ってみたらどんなに美しい芸術が誕生するのかと胸が躍った。

「貴方、名前は? きっと凄い芸術家になれるわ?」
私の言葉に彼女はそっと光を失ったような灰色の目を隠すように目を閉じた。

「シェリル・ヘッドリー様ですよね。オスカー王太子殿下の寵愛を一身に受けるお姫様。そんな雲の上の方に名乗る名前などありません」
冷たく突っぱねられて私は動揺した。
処刑されるまで三年近くあるのに、既に私はこの国の子供にまで嫌われ拒絶されるている。

ジョエルが突然跪く。私は彼の目線の先にいる人を見つめた。
艶やかな黒髪にエメラルド色の瞳。

確か私と同じ年なのに、右目尻の黒子は色っぽく大人びて見える。
肖像画で彼を見たことがあった。一ヶ月前に第三皇子でありながら、立太子した男。
「フレデリック・バロン?」

私の発した言葉に気が付いたのか男が近付いてくる。

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