贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。

5.惚れ薬

「この飲み物は、何ですか?」
「惚れ薬です。どうですか? 私の事が好きになってきたでしょう」

私は思わず吹き出してしまった。彼がどうしてそんな嘘をつくのか分からないが、これは嘘だ。そもそも、本当に惚れ薬が存在しても私がオスカー以外の男を好きになるなんてありえない。

「本当は何ですか?」
口の端から漏れた雫をレースのハンカチで拭きながら尋ねる。

「スイカズラの花酒です。薬効があるから、これからの冬場乾燥した時期に風邪防止に役立ちます。この辺りには至る所に咲いているから特産物として販売してはどうですか?」

淡々と肩をすくめながら語るフレデリック。彼は私がここに赴いた理由をもう察している。私は国境沿いにあるヘドリック領地の地の利を生かしバロン帝国と貿易をしたいと考えていた。

「スイカズラの花酒は抗菌効果があって、うがいにも使えると聞きました。飲ませるとより効果があるとは知りませんでしたわ。私はまだお酒を飲んで良い年齢ではないので、これからはこのような真似はやめてください」

「バロン帝国では十六歳で成人として認められ、酒を飲む事も許されます。酔ったシェリル嬢も見てみたいです」
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