贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
でも、口付けをするくらいには彼が私に好意を持ってくれているのは確かだ。その気持ちは利用させて頂く。

窓の外を見ると既に薄暗くなっていた。裕福な帝国の皇太子がこんな寂れた建物に泊まるとは思えない。今日中に、彼は橋を渡り国境をバロン帝国に戻るのだろう。

「フレデリック皇太子殿下、もうお帰りですよね。我が国とバロン帝国は隣同士なのに親交がありません。でも、今後は親交を持ち貿易を盛んに行えればと思っています」
軽く頭を下げると、顎を捕まれ上を向かせられて目を合わせられる。

「今からバロン帝国に私と一緒に来ませんか? そこで、今後の話をしましょう」
私は困惑した。私は一介の侯爵令嬢に過ぎず、正式に国同士の条約を結ぶ権限は持っていない。

「今、バロン帝国に行ったら、オスカー王太子殿下の成人の儀に間に合わなくなります。セレスタン国王陛下にお話をしおくので、日を改めさせてください」

「では、私が一緒にアベラルド王宮に赴くのはどうですか?」

「バロン帝国の皇太子とものなると、公務が詰まっているのではないですか? 首都にあるアベラルド王宮に赴くと往復だけでも一ヶ月は掛かりますよ」

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