贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
赤ちゃんの泣き声を聞くのはレナルドが生まれて以来だ。

「オスカー様」
「⋯⋯カロリーヌ」

オスカーの視線の先には空色の長い髪にアクアマリンの瞳をした女がいる。彼女はオスカーと同じアメジストの瞳の赤子を抱いていた。

「カロリーヌ・ダミエと申します。シェリル様、今後ともよろしくお願いします」

赤子に手を煩いながらも、私に会釈してくる二十代半ばくらいの女。口元の黒子が印象的な彼女はオスカーと揃いで作ったような淡いラベンダーのドレスを着ていた。『真実の愛』の象徴でもあるアメジストがまぶされた華やかなドレスは新しく仕立てたものだろう。

私のドレスもラベンダー色をしているが、エレーヌ王妃殿下が婚前に着ていたもので昔の流行の型で色も濃いめだ。ダミエという姓に少しだけ見覚えがあり記憶を辿る。ダミエ男爵はエレーヌ王妃の出身であるメリモア公爵家の遠戚だ。ドレスはエレーヌ王妃殿下か、オスカーからのプレゼントだろう。昨晩、出産したばかりだというのに披露宴に生まれたばかりの子とドレスアップして出席するエネルギッシュな方だ。

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