贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
「カロリーヌ様、初めましてですね。美しいアメジストの瞳をした可愛い子ですね。申し訳ありませんが、私と貴方は今後関わる事はないと思いますわ。オスカー王太子殿下の妻と跡取り、私は不要ではありませんか」

オスカーとカロリーヌを代わるがわる見ながら私は微笑んだ。

「オギャー! オギャー!」

愛らしい存在であるはずの赤子の声に心が押し潰されそうだ。回帰前、毎晩のようにオスカーは私を狂ったように抱いた。それは私に一向に子ができなかったからだ。王族に輿入れするチャンスだと周囲の貴族は度々、側室の話題を貴族会議で出した。オスカーは毎晩子作りに励み、子ができない事で私が蔑まれないよう寵愛を示すように私を最高級の品で着飾った。今思えばそんな事に注視していたから、国民が決起するのにギリギリまで気が付けなかったと言える。

(私が不妊だったから、子ができなかったのか⋯⋯)


私とオスカーは固い約束をしていた。

───『この世界にはあなたと私二人だけ』

分かり合える二人でこれからどんな荒波も乗り越えていくことを誓い合った。だから、どれだけ圧力があってもオスカーは側室を娶らなかった。

< 63 / 158 >

この作品をシェア

pagetop