贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
オスカーが尽くし愛したのは回帰前の私。私も眼前の裏切り者にはもう何の気持ちもない。むしろ、深い愛が一瞬にして憎しみに変わったように、オスカーが恨めしい。

「シェリル、話をしよう。僕には君だけだ」

私に手を伸ばそうとしてくる彼の手を思い切り引っ叩く。今更何を言っているのだろう。私に気持ちなんて無い癖に利用してこようとする最低な男。大嫌いだ。

「穢らわしい。二度と私に触れないで」

絶望したようなオスカーの顔に呆れた瞬間、辺りが真っ暗になった。

カシャン、複数の窓が割れる音が聞こえる。
ふと誰かに抱えられた。ふわっと体が持ち上がる。芳香なブゼア調の香りに心が落ち着く。

───彼が私を助けに来てくれた!
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