贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
一瞬のうちに城中の光を奪うこともできるらしい。

私たちの馬車を馬に乗った護衛の騎士たちが囲んでいる。
フレデリックが派遣してくれていたバロン帝国の騎士たちだ。彼らには、この二年アベラルド王国の騎士たちに稽古をつけて貰ったり、戦術を教えて貰ったりした。
しかし、彼らはバロン帝国の騎士であって、アベラルド王国の騎士ではない。フレデリックの命令により動くのだろう。

私の風で少し乱れた銀髪にフレデリックが触れて来て、私はその手の温もりに何故か涙が溢れた。貴族令嬢たるもの人前で泣くべきではない。でも、今は失った愛があまりに私の中で大きくて、心臓が奪われたように苦しい。

「シェリル、思いっきり泣くといい。君が望むなら、裏切り者の王子は殺してあげるよ」
「フレデリックもカロリーヌの事を知ってたの? 私、馬鹿みたい。愛や信頼なんて幻だったって、やっと昨晩気付いたの⋯⋯」

涙を止めようと目に力をいれても次から次へと溢れてくる。
フレデリックが私の目元に手を伸ばしてきた。
その仕草に私が目を瞬いていると彼がニヤッと笑う。

「シェリルの落とすダイヤモンドを残さず拾いたいんだ」
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