贅沢悪女と断罪された私がドレスを脱ぎ捨てた結果。
正直な感想が漏れた。僕には兄弟がいない。情婦にできた子がいたとしても、秘密裏に流されているだろう。兄弟がいなくて寂しいと思った事はない。むしろ無駄な王権争いがなくて平和だとさえ考えていた。

「お父様がお母様を大好きだから、赤ちゃんが生まれたんです。本当に可愛くて、私、レナルドの為なら何でもできます。今も何してるか気になってしまって、オスカー王太子殿下に満足な対応ができません。この婚約の話は断ってください」

シェリルが貴族令嬢とはあまり馴染めない理由が分かった。これ程までに自分の欲望に正直だと婉曲表現で相手を咎める技術を競う貴族令嬢とは合わないだろう。

「シェリル!」

僕は咄嗟に彼女の手首を掴んだ。彼女の溢れる愛を自分に向けて欲しくなった。周囲が自分に擦り寄ってくる中、空気の読めず欲望に抗えない彼女が愛おしい。僕を好きになって盲目的に求めて欲しい。

「オスカ王太子殿下?」
「オスカーと呼んでくれ。敬語もいらない。僕は君を婚約者にする」

喜んでくれると思った僕の告白に彼女は顔を顰めた。

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