【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
カウンターでうつむきがちにグラスを握りしめているライザに、イグナートはゆっくりと近づいた。
一応仕事で顔を合わせたこともあるわけだし、先日の治療の礼を言うという名目もある。心の中でそうつぶやきながら声をかけようとした時、ライザがぐいっと勢いよくグラスを呷った。
なめらかな白い喉に一瞬目を奪われるが、はぁっと大きなため息をついてグラスをテーブルに戻したライザの身体は不自然に揺れている。明らかに酷く酔っぱらっている動きだ。
「すみません、もう一杯――」
気がつけば、店員に声をかけたライザを止めるように、イグナートは彼女のグラスを手で押さえていた。
「飲みすぎだ。女性が一人でこんなに酔っ払って、帰れなくなったらどうする」
少し怒った声になってしまったのは、無防備なライザに危機感を覚えたからだ。年若い女性がこんな風に酔っ払った姿を見れば、下心を抱く男もいる。
このあと二人がどうなったのかを考えれば、イグナートだって下心を持って彼女に近づいた男に違いはないのだが、そんなことは棚に上げておく。
声をかけたイグナートに、ライザはぷいと子供っぽい仕草でそっぽを向くとイグナートの手を振り払った。
仕事中のキリっとした顔とは違う素の表情を見せられて、イグナートの胸はざわめきっぱなしだ。
この機会を逃してなるものかと、イグナートはライザの隣に腰を下ろし、彼女が酷く酔っぱらった原因を聞き出すことにした。
自分の不甲斐なさを嘆くライザは、それだけ真摯に患者と向きあっていたのだろう。澄んだ緑色の瞳から、まるで宝石のような涙がぽろぽろとこぼれ落ちる様子にほんのり見惚れながらも、イグナートは自分もライザに救われた一人なのだと告げた。
やがて、すんと鼻を鳴らして泣き止んだライザは、真っ赤になった目元を擦りながら照れくさそうに笑った。
「ごめんなさい、子供みたいに泣いてしまって……。でも、元気になりました。明日からも、頑張ります」
「あぁ、応援している。遅くなるし、そろそろ帰ろうか。送るよ」
話しているうちに少し酔いは醒めたように見えるが、ライザを一人で帰すつもりはない。できれば今度は食事に行く約束でもできたらいいのだがと思っていると、ライザの手がイグナートの服の裾をぎゅっと掴んだ。可愛すぎるその仕草に内心動揺していると、ライザは小首をかしげてイグナートを見上げた。
「あの、よければうちに来ませんか?」
「えっ……」
「だって愚痴ばかり聞いてもらって、全然楽しくなかったでしょう。場所を変えて、今度は楽しく飲みましょう。私、この近くで一人暮らしをしているんです。だから、大丈夫ですよ」
突然のライザの誘いに、イグナートは言葉を失った。どう考えても大丈夫ではないのだが、彼女はふわふわとした笑みを浮かべてイグナートの返事を待っている。紳士ならばここでぐっと堪えてライザを自宅に送り届け、後日あらためて食事に誘うべきだろう。だが想いを寄せる女性に誘われて、それを断れるわけがなかった。
場所を変えて飲みなおすだけだと心の中でつぶやき、イグナートはライザの提案を受け入れた。
一応仕事で顔を合わせたこともあるわけだし、先日の治療の礼を言うという名目もある。心の中でそうつぶやきながら声をかけようとした時、ライザがぐいっと勢いよくグラスを呷った。
なめらかな白い喉に一瞬目を奪われるが、はぁっと大きなため息をついてグラスをテーブルに戻したライザの身体は不自然に揺れている。明らかに酷く酔っぱらっている動きだ。
「すみません、もう一杯――」
気がつけば、店員に声をかけたライザを止めるように、イグナートは彼女のグラスを手で押さえていた。
「飲みすぎだ。女性が一人でこんなに酔っ払って、帰れなくなったらどうする」
少し怒った声になってしまったのは、無防備なライザに危機感を覚えたからだ。年若い女性がこんな風に酔っ払った姿を見れば、下心を抱く男もいる。
このあと二人がどうなったのかを考えれば、イグナートだって下心を持って彼女に近づいた男に違いはないのだが、そんなことは棚に上げておく。
声をかけたイグナートに、ライザはぷいと子供っぽい仕草でそっぽを向くとイグナートの手を振り払った。
仕事中のキリっとした顔とは違う素の表情を見せられて、イグナートの胸はざわめきっぱなしだ。
この機会を逃してなるものかと、イグナートはライザの隣に腰を下ろし、彼女が酷く酔っぱらった原因を聞き出すことにした。
自分の不甲斐なさを嘆くライザは、それだけ真摯に患者と向きあっていたのだろう。澄んだ緑色の瞳から、まるで宝石のような涙がぽろぽろとこぼれ落ちる様子にほんのり見惚れながらも、イグナートは自分もライザに救われた一人なのだと告げた。
やがて、すんと鼻を鳴らして泣き止んだライザは、真っ赤になった目元を擦りながら照れくさそうに笑った。
「ごめんなさい、子供みたいに泣いてしまって……。でも、元気になりました。明日からも、頑張ります」
「あぁ、応援している。遅くなるし、そろそろ帰ろうか。送るよ」
話しているうちに少し酔いは醒めたように見えるが、ライザを一人で帰すつもりはない。できれば今度は食事に行く約束でもできたらいいのだがと思っていると、ライザの手がイグナートの服の裾をぎゅっと掴んだ。可愛すぎるその仕草に内心動揺していると、ライザは小首をかしげてイグナートを見上げた。
「あの、よければうちに来ませんか?」
「えっ……」
「だって愚痴ばかり聞いてもらって、全然楽しくなかったでしょう。場所を変えて、今度は楽しく飲みましょう。私、この近くで一人暮らしをしているんです。だから、大丈夫ですよ」
突然のライザの誘いに、イグナートは言葉を失った。どう考えても大丈夫ではないのだが、彼女はふわふわとした笑みを浮かべてイグナートの返事を待っている。紳士ならばここでぐっと堪えてライザを自宅に送り届け、後日あらためて食事に誘うべきだろう。だが想いを寄せる女性に誘われて、それを断れるわけがなかった。
場所を変えて飲みなおすだけだと心の中でつぶやき、イグナートはライザの提案を受け入れた。