【書籍化決定】身体だけの関係だったはずの騎士団長に、こっそり産んだ双子ごと愛されています
 あまりの快楽に、少し意識を飛ばしていたような気がする。ぼんやりと目を開けると、イグナートが顔をのぞき込んでいた。

「気持ちよすぎて飛んじゃった?」

「……止まってって言ったのに」

「だってライザ、すごく気持ちよさそうな顔してたから。その顔見るの好きなんだ、俺」

 さらりとイグナートが口にする「好き」という言葉。単に感じている時の顔を見るのが好きだということなのだろうけど、その言葉にライザがどれほど心を揺さぶられているか、彼は知らない。

――私のことを、好きになってくれたらいいのに。

 ぽつりと浮かんだ想いを、ライザは意識して胸の奥深くに沈める。

 もう何度も、数えきれないほど身体は重ねているが、イグナートの気持ちは聞いたことがない。

 貴族も恋愛結婚が主流になり、純潔であることも昔より重要視されなくなった。だからこそライザはイグナートとこんな関係を続けていられるのだけど、結婚どころかおつきあいをするといった話も二人の間には出たことがない。

 結局、イグナートにとってライザは、都合よく欲を解消できる相手でしかないのだ。

 それでも、そばにいられるなら、こうして抱いてもらえるなら構わないとこの関係を受け入れたのはライザだ。

 伯爵家の嫡男であるイグナートは、いずれ誰かと結婚する日が来る。その日までは、この不安定で不確かな関係に縋っていたい。

 このベッドの上の彼だけは、ライザのものだから。

「ライザ、考え事?」

「っあ、んんっ」

 耳たぶをかぷりと食んで、イグナートが囁く。

「何を考えてたの、ライザ」

 耳元で吐息まじりにイグナートは囁く。答えを催促するように彼の指がライザの肌を撫でるが、敏感になった耳に意識が集中してしまって考えがまとまらない。

「ぁ……イグナー……トの、ことっ」

「本当に? 俺に抱かれながら別のことを考えてたんじゃないの、ライザ」

「違……ほんとに、イグナートのことしかっ」

 頭の中はイグナートでいっぱいで、他のことなんて考えられるはずがない。

 必死に紡いだライザの言葉に、彼は嬉しそうに笑った。

「うん、俺のことだけ考えていて。ライザの心も身体も、俺だけでいっぱいにしたい」

 そんな独占欲の強いことを言いながらも、彼は決してライザとの将来を語ろうとしない。

 所詮これも、ベッドの上の睦言にすぎないのだ。

 微かに痛む胸を自覚しながらも、ライザはそれを快楽で押し流すため、イグナートに強く抱きついた。
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