私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
「ココアでも飲むか?」


勢いのままコップの水を流し込めば、皇がいつの間にか棚からマグカップを取り出し聞いてくる。


「ココア?」


って皇の家でよく出してくれるあれか?


「っふ、随分と気に入ったようだな?入れてやるから座ってろ」


そんな分かりやすかっただろうか・・・。


小っ恥ずかしくなり背を向けてソファへ急いだ。





キッチンから目を逸らすべく、コップを置く音や水を沸かす音を聞きながらカーテンから除く月明かりを見つめる。


時刻は1時をとっくに過ぎていた。


時々この家でも皆と夕飯を共にすることもあったし夜も自分ではない誰かの生活音があることは初めてではない。だけどこんな遅い時間までというのは奇妙な感じだ。


大抵は22時頃には依頼か何かで外出し日を跨いでから家に帰る生活をしていたからな。


水嶋もここ最近は裏切り者の件で夜遅くに帰ることはあるし、家に居る日でもその事には気づきながらも触れてこない。相手を尊重するいい人間だ。


だが、こういう状況も悪くはないのかもな。


「冷ましてから飲めよ」


「ありがとう」


皇も自分の分を入れたかと思えば向かいのソファに座り台本にまた目を落とす。
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