私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
「つ、妻!?」


「ましろ結婚してたのか!?」


玄関で広がる阿鼻叫喚。


俺はというと受け入れずにいた。


あ、綾波 薺って。ましろんが妻って・・・。


そう言われればこの家に帰って来ることも、その指にはめられた指輪も全部が納得いく。何一つ間違ったことはない。


それなのに、どんどん血の気が引いていくのが伝わる。





君のおかげで楽しく過ごせてたはずなのに、これから俺はどんな風に君と接すればいいんだろう。


気づき始めたこの感情はどうすれば・・・。





「薺さん。こいつらを揶揄うのはやめてください」


「へっ?」


自分でも驚くほどの情けない声が出たと思う。


「ははは、ごめんね。君達の反応が面白くて大人気ないことしちゃった」


目尻に浮かんだ涙を拭いながら綺麗に笑う薺さん。


ど、どういうこと?


「改めて自己紹介させてもらうね。僕は綾波 薺、この子の父です」





「え、えっ、お父さん!?」


「嘘だろ!?だ、だって・・・」


若すぎるだろ!?


どう見たって20代にしか見えないんだけど!?

そうじゃなくてほっとしたけど!!まだ彼氏だとか旦那とかの方が納得できるというか!!


失礼だとは思いながらマジマジとその顔を見てしまう。


「こう見えて38だよ。昔から年相応に見られなくてね」


困ったもんだよと苦笑いを浮かべる。
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