私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
「綾波も頼ってくれていいのに。どんな話も、聞く、か、らさ・・・」


肩の重みが増す。


肩越しに規則正しい呼吸を感じて瑠璃川が寝てしまったことを察する事ができた。


「寝たのか」


「いつから見てたのよ変態ども」


いつの間に全員が集合してたんだか。


「はは、丁度来たばかりだよ」


「あれ、連絡入れてたけど見てない?」


確認すれば合流できて私達の居場所を知りたいという連絡が入っていた。


「気付かなくてごめんなさいね」


連絡があった時間から結構経っている。大分探させたに違いない。


「大丈夫ですよ、それよりも文ですが」


「文くんぐっすりだねー」


慣れた動きで瑠璃川を背負う谷垣のことを見る。


こうして見ると兄弟のようだと言ったらこの子犬は騒ぐんだろうか。


「ありがとうましろ」


「・・・どういたしまして」


こいつらと出会ってから感謝される事が増えた気がする。そんな大それた事はしていないというのに。


むず痒くて仕方ない。





瑠璃川を背負ったまま見て回る事は出来ないため少し早いが帰ることになった。


出口へ向かう瞬間大きな音が鳴り響き皆で空を眺める。


「・・・花火」


「綺麗ー!」


何発も打ち上げられる花火に目を奪われる。


「残念ね、瑠璃川も花火楽しみにしてたのに」


「また見に来ればいい」


「そうだよ!また来年皆で来ようね!」


はしゃぐ優里に笑みで返す。


約束なんて、出来なかった。


こいつらの傍を離れるまであと、一年。








こうして夏休みは終わりを迎えた。
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