私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
あたしと同じぐらいの身長をした女の子が黒板の前で立ち止まる。


きゅるんとした大きな瞳にぷっくりとした唇、左に入った赤メッシュを巻き込んだサイドテールは彼女によく似合っていた。


ま、また可愛い子が来た!?


ましろちゃんを美で例えるならこの子は可愛い、だと思う。何故かフリルやリボンが施された旭ヶ丘の制服も着こなしてると思う。


「それじゃ自己紹介頼めるか?」


「僕、馴れ馴れしく関わる気ないから。する必要ない」


ど、どうやら性格に癖があるみたいだけど不機嫌そうな顔までもが可愛いって思えちゃう。


「え、えーっとなら俺が。この子は橘 皐月(たちばな さつき)だ本人はこう言ってるが仲良くするように。それじゃ席だけど・・・」


橘さんは先生の言葉を待たずに教室の中を歩いて行く。


皆呆気にとられているけど、あたしは不安が募るばかり。だって、こっちに向かって来てるよね・・・?


き、気のせい!?気のせいですかこれ!?


今にも汗が吹き出しそうな状況を必死に否定するけど橘さんの足はあたしの席の前で止まった、気がする。


どうか気のせいでありますように。そう思いながら恐る恐る顔を上げる。


ひぃ!!


そこにはさっき見た綺麗な顔があった。


「僕、ここがいいからあんた退いて」


「え、ええ!?」
< 56 / 119 >

この作品をシェア

pagetop