私は‪✕‬‪✕‬を知らないⅡ
(ましろちゃん・・・!)


カーブを曲がって少しした先にその姿が見えて安心した。





のが、いけなかったんだと思う。





片足が何かに引っ掛かる感覚と同時に体がぐらりと傾いていく。


駄目駄目駄目っ!


そう言い聞かせるのに体は止まらなくて。


その勢いのまま正面へ倒れてしまう。


さっきまでの応援は無くなって変な空気が流れてる。皆が注目する中で転んだんだもん、そりゃそうだよね。


『春野選手大丈夫か〜!?この隙にB組とD組が前へ出る!』


鼻、痛いや。


それだけじゃない。手も足も擦りむいた所が痛い。


じわり、目頭が熱くなるのを感じながらもなんとか体を起こす。


このタイミングでも横を誰かが通り抜けて行く。


前には4人。ああ、あたしのせいで今最下位だ。


本当は突っ伏したまま消えたい。


だけどあたしで繋ぐのを止めたくないから。


そんな変な意地でまた走り出す。


ましろちゃんの姿がどんどん近づいて、不安が押し寄せる。


ましろちゃん、どんな表情してるんだろ・・・。


安心して、勝手に不安になって、ほんと自分勝手だよあたし。




「優里!」


涙が出そうになって俯きそうになるあたしを呼ぶ声が聞こえる。
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