俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
けれども彼の美貌に目を奪われていられる状況ではない。今まで人がよさそうだった男が、睨むように彼を見ていた。

「君も日本人? 彼女の知り合いか?」

「前半だけ合っている」

「知人じゃないならどこかに行ってくれ。それともヒーロー気取りか?」

「俺の真後ろでハンティングするから気になった。静かに飲む時間を邪魔されて迷惑だ」

すぐ近くのカウンター席に、彼が飲んでいたと思われるワイングラスが置かれていた。

たしかに大きめの声の会話なら、そこまで届いてしまいそうだ。

満席なので移動できず気になっても我慢して飲んでいたが、ついに耐えられなくなって口を挟んできたということだろうか。

(正義のヒーローじゃなくて少し残念だけど、同胞だからと言って私を助ける義理はないよね。楽しい時間を邪魔したのに助けてくれたんだから、感謝しないと)

頭を下げたい気分の梨乃とは逆に、男は忌々しそうに舌打ちした。

「だったら部屋に戻って飲み直せ。もう少しで彼女を落とせるところだったのに、迷惑なのはこっちの方だ」

「やはり狙いはそれか。最初からひとり旅の外国人女性を狙っていたんだな?」

(私、騙されてたの……?)

もしかしてフラれて傷心中だというのも、梨乃の気を引くための嘘だったのだろうか。

助けが入らなければ酔い潰されて、彼の部屋に連れ込まれていた可能性がある。

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