俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
肩を抱かれ、彼の胸元に横顔を押しあてられる。

(うっ……)

ボタンダウンシャツから香るのはツンと鼻にしみるような体臭で、煙草の匂いも混ざっていた。

「困ります。やめてください」

慰めるつもりの行為だったとしても触れられたくない。

急いで離れようとしたが、彼の腕に力が込められた。もう一方の手を太ももの上に置かれ、たちまち焦りだす。

(この手の意味は? もしかして……)

下心を感じた途端に怖くなった。人が大勢いる場なので心配していなかったが、甘かったようだ。

「フラれた者同士、慰め合おう」

「やめて!」

思わず日本語で拒否したその時――。

「嫌がってるだろ。手を離せ」

近づいてきた誰かが、梨乃の肩から男の腕をどけてくれた。

急いで立ち上がり、男と二歩の距離を取る。

助けてくれたのはスタッフではなく客のようで、黒髪のビジネスヘアに黒い瞳のアジア人風の男性だった。

年齢は三十代半ばくらいだろうか。梨乃より頭ひとつ分ほども背が高く、ダークグレーのスーツがよく似合っている。美麗で凛々しい目鼻立ちで、特に目が印象的だ。

涼しげなのに眼差しは力強く、こちらに流された視線に鼓動が跳ねた。

(こんなにかっこいい人、初めて見た……)

失恋したばかりなのでときめくことはないが、特別ななにかを目撃したような心持ちになった。

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