俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
声をかけようとしたが、誰かと話しているようだ。

その相手のすぐ後ろを大柄な男性社員が歩いているので、片足の黒いパンプスとほっそりした足首しか見えなかった。

声をかけるのは諦め、ぞろぞろと出口に向かう社員の波に乗り外へ出た。

すると美波が玄関の横で立ち止まり、道路に向けて手を振っている。

「市原さん、おつかれさまでした」

(えっ、話してた相手って市原さんなの!?)

ついにどんな人なのかがわかると期待して、美波が手を振る方向を見たが――。

(ちょっと、大きい人、邪魔なんだけど)

まるで梨乃の視線から隠そうとしているかのように、大柄な男性社員が一定の距離を保って市原の後ろを進んでいる。

さっきと変わらず市原の足元しか見えなかった。

回り込むしかないと思って歩調を速めようとしたが、美波に腕を掴まれ足を止められた。

「梨乃、おつかれ」

「ごめん、ちょっと待って。今――あれ?」

視線を戻した先にあるのは街灯で、大柄な男性社員も市原らしき女性の姿もなかった。

(イリュージョン……?)

狐につままれた気分でポカンとしていると、「どうしたの?」と顔を覗き込まれる。

「さっき、市原さんと話してたんだよね?」

「そうだよ。ご主人が残業でデートできないから、今日はひとりでバーで飲むんだって。お洒落で素敵だよね。私ならひとり分のお弁当とチューハイ買って帰るだけかも」

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