俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
結婚で遠方に引っ越す話がなければ、間違いなく今も勤めていただろう。

(百歩譲って婚約破棄が仕方ないとしても、せめて退職願を出す前に言ってよ)

その憤りはすでに勇大にぶつけたが、彼いわくその時点では運命の相手からなんとか気持ちを離そうと梨乃のために努力していたそうだ。

(どこが私のためなのよ)

悔しさと怒りだけでなく悲しみにまで飲まれそうで、ベッドに身を起こした。

(気持ちを切り替えて帰国したいのに、こんなんじゃダメだ)

脱いだばかりのブーツを履いた梨乃は、ハンドバッグを持ちコートは着ずに部屋を出た。

廊下に人通りはなく、夜のホテルは静かだ。無人のエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押した。

マンハッタン島に建つこのホテルは六十階建てという超高層で、最上階は展望ラウンジバーになっている。

夜景スポットとして有名で宿泊客以外の利用も可能。連泊している梨乃は昨日も夜景を見ながらカクテルを楽しんだのだが、ひとりで部屋にいると元彼の顔が浮かんできそうなので今夜も飲んで忘れることにした。

エレベーターはラウンジに直接繋がっていて、扉を開くといきなり大パノラマの夜景が目に飛び込んできた。

初めて見た昨日ほどではないが、芸術的なまでに美しい大都会の輝きに今日もしっかり感動する。

(きれい……!)

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