俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
けれども富樫の声はいつもと変わらず穏やかだ。

「事前に相談してくれたら驚かずにすんだとは思う。だけど結果としては、私を飛ばしてCEOに直談判してくれて正解だよ」

「えっ、あの、どうしてでしょうか?」

「私なら許可を出せなかった。コスパを考えると無理だと判断する。黒見CEOだから効果が未知数すぎて予測できない長期戦略が通ったんだよ。おめでとう。私も興味があるから協力は惜しまないよ」

「ありがとうございます!」

実は前の会社でも似たような企画を提案したことがあり、即却下されていた。そこに多額の予算は組めないという判断だ。

黒見だから承認してくれたという富樫の意見に同意する。

その時、左隣からバキッとなにかが壊れる音がした。

驚いて振り向くと、宇津木が折れたボールペンを握りしめている。

(折ったの? 片手で?)

彼女は自分のノートパソコンの画面を見つめているだけで視線は合わない。

その横顔は一見すると普通の表情だが、背景に般若が見えるような心地がした。

(怒ってるよね。ゲリラ的なプレゼンが通ったことに対して? それとも……)

黒見とふたりきりでのランチミーティングの方かもしれない。

彼に恋する宇津木の気持ちを考えれば、注目を浴びても社員食堂の方がよかったのではないかと判断ミスに気づいた。

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