俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
急いで黒見の腕から抜け出した彼女は五ノ森に駆け寄ると、なぜこういう状況になったのかを早口で必死に説明していた。

「そうでしたか。誤解してすみません」

「いえ、わかっていただけたならそれで。では三十分が経ちましたので私は部署に戻ります。失礼しました」

逃げるように退室する梨乃の背を黒見はククッと笑って見送った。

(耳まで顔が赤かったな。それほどまでのことか?)

ドアが閉まり五ノ森とふたりになる。

テーブルにトレーを置いた友人が、立ったまま梨乃の分のコーヒーを飲んでいた。

ジャケットを着ようとして近づくと、なにか言いたげに見られる。

「なんだ?」

「別に。随分とご機嫌だなと思っただけだよ」

「まぁそうだな。気分がいい。欲しいものが見つかったんだ」

「そんな気はしてた」

黒見の心境が読めるのは、長いつき合いの賜物だろう。

彼女に惹かれている気持ちを隠す気はないので、焦りも恥ずかしさも湧かなかった。

「いい蹴りだった」

左腕の痺れを思い出して言うと、五ノ森が少し笑う。

「それもある意味、将吾の好みか。お前の母親とは真逆のタイプだ」

黒見に母親の話は禁句である。それを知っていて話題にするのは五ノ森くらいのもので、睨んだところで少しも動じてはくれない。

こういう奴だと諦めたのは黒見の方だ。

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