俺様CEOは激愛の手を緩めない~人生どん底のはずが執着愛で囲い娶られました~
それに気づくと同時にふと思う。もしかするとこの場で連絡先を交換しなかったのは、誘いを断らせないようにするためだったのではないだろうか。

(そこまでして私とデートしたいの?)

勝手な解釈をした直後に自分にツッコミを入れる。

(平凡な私が、いい女気取りって笑い話でしょ)

どういうわけか気に入られたが、彼に好かれたからといって自分の魅力が上がったわけではない。

勘違いしないようにと自分を戒め部署に引き返した。

それから数十分して仕事を終わらせ、約束の時間にカフェに着いた。

入店する前に路肩に黒塗りのタクシーが停車し、黒見が降りてきた。

黒いコート姿の彼に心臓が波打つ。

ビジネス用のシンプルなものなのに彼が着ると洗練されて見える。

色の中で最強なのが黒だと梨乃は思っている。黒を混ぜればどんな色でもダークに染まる。影響力が強く攻撃的なイメージだ。

その色が彼に似合うと感じるのは、少しずつ人となりがわかってきたからだろう。

(私も染められてしまう?)

一抹の不安を覚えたが、恋愛する気はないのだから大丈夫だと自分に言い聞かせた。

「乗れ」

偉そうな口調だが、梨乃の通勤バッグを持ってくれて意外と紳士的だ。

奥に詰めて座ると隣に彼が乗りこみ、すぐにドアが閉まる。

車内は思ったより広くシートの座り心地が抜群だ。

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