幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
キンコーンとチャイムが鳴って、戸を開けて先生が教室に入って来る。
担任の小山田先生は、いつもと同じように、教卓から号令をかけて静かに挨拶した。
「えー」
小山田先生が咳払いした。
「今日は皆さんにお知らせがあります。」
数人の女の子達が嬉しそうに目配せし合う。
恋が思った通りだった。
「大変喜ばしい事に、我がクラスに、今日から新しい仲間が増える事になりました。樋山くんです。」
先生が呼ぶと、ガラガラと戸を開けて、転校生がスタスタと教室へ入って来た。
その姿を見て、恋は窓際の席で息を呑んだ。
教室を歩いて来た転校生は、公園で出会った、あの男の子本人だった。
「樋山美風 です。ミカゼと読みます。」
美風はリラックスした表情で、黒板の前で挨拶をした。
次に、美風は教室を見渡して、自分を凝視している、あやかし狐の少女に目を留めた。
気づいた顔をして首を傾げた後、美風は、恋に向かってにこっと微笑んだ。
「特技は走ること。趣味は写真を撮ることです。これからよろしくお願いします」
改めて見ると美風はとてもきれいな顔をしていた。
宗介はすっきりと涼しく整っているが、美風は、それとはまた趣が違って、美しい人形のような顔立ちをしている。
「樋山くんは、休みの日は何してますか?」
「大体の場合は写真を撮ってます。それかピアノを弾いてるか。買い物にも行くし。」
質問タイムになり、美風は、新しいクラスメートからの質問に答え始めた。
先生の指示で、転校生の美風の席は恋の真ん前に決まってしまった。
恋は、困ったなと思いながら、美風が席に付くのを眺めていた。