幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜
宗介の家には誰も居なかった。
これから怒られるのが分かっていたので、恋は消沈してのろのろと手を洗った。
「どこ行く気?」
出口へ向かおうとすると声をかけられて、仕方なく恋がリビングへ入ると宗介はしかめっ面で壁に寄りかかって立っていた。
「言いたいこと分かる?」
宗介がわざと笑顔をつくって聞いた。
「帰ってこれなかったらどうするつもりだったんだよ。お前は。ほんっと、馬鹿なんだから!。」
「だって」
「狐の展示なんて、わざわざ行かなくっていいんだよ。説明見なくてもお前は分かってるんだから。全くどんだけ心配だったと思ってるんだよ!。」
「……だって」
恋は言い返すことができない。
恋はふくれっ面で小声で恨み言を言った。
「……痛かった」
「しつけ。打たれて当然、お前は。打たれないとでも思ってたの?。ざまあみな。」
「……」
「もう懲り懲りですごめんなさいって僕に言うんだね。ったく。ほんとに。二度とするなよ。まったくどういう考えで居るんだか。僕がどれだけ心配したと思ってるんだよ。」
本当は、次に宗介が言おうとしたのは、お前が見つかって良かった、という心からの言葉だった。
恋が見つかるまで、宗介は気が気ではなく、もし見つからなかったらという暗い気持ちに呑まれかけていたのだ。
しかし、折り悪く、怒られ通しの恋は悔し紛れに呟いた。
「もう口聞かないってこの間言った」
「……」
イラっと来た宗介は無言で手を伸ばすと恋の片頬を思い切り抓り上げた。
「なあに?なんか言った?そんなにげんこが食いたいの?」
2人の気持ちはここでも通じ合わない。