幼なじみは狐の子。〜幼なじみと転校生の溺愛〜




 その場はそれで収まったが次はそうはいかなかった。

 恋は、ゴーカートの後に、バルーンに乗って、それから空飛ぶ椅子に乗った。

 宗介と美風は恋の後について2人とも一緒に乗ったが、さして楽しくはなさそうだった。




 恋は、最後に観覧車に乗りたい、と言った。

 観覧車は水辺に立っていて、上からは遊園地と周辺の街全体の景色が見下ろせた。

 観覧車はカップルで乗ると縁起が良いと言われていた。

 宗介が言った。



「これはカップルで乗るものだから、樋山はここで待ってろよ。」

「は?。」

「当たり前だろ。僕と恋のデートに、のこのこ付いてきて。邪魔なんだよ。」



 宗介は恋に振り向いて言った。


「恋、お前の彼氏は僕だよな?」


 美風は宗介を見ていたが、突然、思いついた様に、腕を伸ばして宗介の肩を押した。


「っ」


 不意をつかれた宗介は岸辺から落ちて、足を湖に突っ込んだ。


「何すんだよ!。」


 もう少しという所で水浸しになりそうだった宗介は、体勢を立て直すと美風に殴りかかった。

 美風はそれをかわすと、宗介を蹴り上げた。宗介もやり返した。


「辞めなよ2人とも!」


 恋はとっさに狐の姿になって、2人を引き剥がそうと噛みついた。


「っ!」


 宗介は恋を庇うと喧嘩中とは思えない軽さでふわりと上に放り投げ、恋は注意書きの掲示板にぱこんとぶつかって崩れ落ちた。

 係員さんがやってきて2人を引き剥がした。


 バスへ乗って家へ帰る分かれ道になるまで、宗介と美風は口をきかなかった。









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