元婚約者様、その子はあなたの娘ではありません!
「ママ、そのひとだぁれ?」

「は?」

 まま? ままって、なにを言っているの?

「マリー……ま、まさか、その子は……!」

「へ?」

 驚愕の表情になったアロイスは、よろよろと女の子に近づくと地面に膝をついて視線を合わせた。

「……きみの名前は?」

「オルガ! よんさい!」

 にっこり笑って、誇らしげに四本指をたてて見せる女の子。

「そうか、オルガというのか。
 四歳……やはり、きみは……」

 彼の碧の瞳に涙の膜が張り、私は意味が分からなくてひたすら困惑した。

「俺はアロイスという」

「あろいす?」

「きみは、ママが小さかったころによく似ているね」

 彼の大きな手がオルガの金色の頭にそっと置かれた。

「でも、瞳の色は……パパ譲りだ」

 ぱぱ? ぱぱってなに?

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